突然だけど、どこまで小さな表面実装部品を正確に手作業ではんだづけができるのか
試してみたくなってしまいました。
小さい部品を手作業ではんだづけするキットや製作記事が無いかとインターネットの海を
漂流していると面白いプロジェクトを発見しました。
Hackaday.io "An Unfortunate SMD Project"
このプロジェクトは5種類のサイズの部品 1206,0805,0603,0402,0201(inch)の
LEDと抵抗、8pinのSOICパッケージのマイコン、表面実装のコンデンサとCR2032で
構成されていて、最終的にバッジとして身につけることができるようになっています。
小さな部品が使われていて手作業でのはんだづけに挑戦しがいのあるプロジェクトになっています。
基板の販売やキットの販売などもやっているようですが、日本向けに発送は残念ながら今は無いようなので、
自分で作る事にしました。せっかくならオリジナルでつくりたいよね
●基板設計
プロジェクトを丸パクリ参考にして部品配置やパターンなどを見直し、作り直した基板がコレです。
直径は32mmの丸い基板になっています。
裏面にはCR2032とバッジ用の金具 "貴和製作所 ウラピン No.101 ニッケル"
がはんだ付けできるようになっています。
部品配置や表面実装部品のパッド形状やパターン設計を見直して、かっこいいバッジに設計し直しました。
本家の基板と違う箇所は、CR2032の電池ホルダがスルーホール部品になっている箇所と、
ピンバッジからブローチピンに変更した箇所になっています。
またLEDと抵抗の配置はパッドの端で揃えてあります。
本家はとても親切なのでLEDや抵抗が正しく実装できたのか確認できるように電極が用意されていますが、
自分の設計した基板には確認用の電極は用意していません。
仮に間違った向きにLEDをはんだ付けしてしまっても、3216や2012や1608といった大きな部品なら、
比較的簡単にはんだ付けをやり直す事ができますが、1005や0603の部品を手作業で取り外すのはとても大変な作業に
なります。
さらに、外した部品を正しい向きではんだ付けし直すのはとても難しい作業になるという点から
間違っている事が確認できても修正は困難を極める事から、光らなかったら諦める事にしたので、
確認用の電極はあえて用意していません。
●発注した基板
完成した基板
基板はJLCPCBで製造しました。
黒色の基板で製造すると程よくつや消しの黒の基板が出来上がるのでとてもカッコイイです。
今回は25枚製造して$6.10でした。
いつもお世話になっております。
●回路の説明
ATtiny13Aを使用して5つのLEDを点灯させています。
LEDと直列に入っている電流制限抵抗は全て1kΩにしてあります。
LEDを別の色で実装したい時に抵抗まで購入しなくて良いようにするためです。
3216,2012,1608,1005,0603のLEDはアキバでも通販でも簡単に手に入ります。
好きな色のLEDで実装することができます。
追記 2024/11/12 1005の抵抗だけ2.2kに変更してあります。
好きな色のLEDを実装する人は居ないらしいので。緑色のLEDが眩しかったので...
T1-T6は基板表面にある6つのパッドでマイコン書き込み用の端子です。
ピッチは2.54mmになっています。
書き込み用のプローブピンなどが使用できるようになっています。
●LEDの向きの確認
この基板の最大の難所はLEDのカソードの向きを確認する事です。
3216や2012などの大きなチップはカソードの向きを確認するのは簡単ですが、
1608や1005のサイズになってくると確認はできても結構な確率で間違いが発生します。
0603にもなると肉眼ではカソードの向きを確認することはほぼ不可能に近いので、
顕微鏡やルーペを使用して確認するしかありません。
確認する手段が無い場合は50:50の確率で勝負に出るしかありません。
一応カソードの向きがわかるようによく出回っているLEDのカソードマークの一覧を置いておきます。
チップLEDのカソードの向き
本来ならLEDを逆に取り付けても光るように設計するほうが良いと思いますが、
使うマイコンが8pinで制約の無いポートは5つしか無いので、逆に取り付けられたLEDを
光らせる事は諦めることにしました。
逆に取り付けられたLEDを検出し光らせる方法は
こちらに詳しく載っています。
●0603のチップの大きさ
米つぶに載せた0603(metric)のLEDと抵抗
0.6mm x 0.3mmのチップは流石に小さいです。
とても尖ったピンセットじゃないとそもそも掴むことすら不可能でした。
流石に落としたり飛ばしたりすると見つけることは不可能でしょう。
お米こんなに大きかったっけ?
●実装してみた。
自分が初めてはんだ付けした基板はコレです。(洗浄してなくて汚くてごめんなさい)
動作状況のGIF画像(実体顕微鏡越しに撮影)
●実装した感想
0603(Metric)のはんだ付けは想像以上に難しくとても時間がかかりました。
理由はLEDの向きの確認もそうですが、そもそもこのLEDは裏面にしか電極がありません。
はんだづけするパッドの大きさも手はんだできる限界に近い大きさにしてしまったので、
LEDからはみ出たパッドの面積は、LEDから僅かにパッドが見えているだけしかなく、
普段はんだ付けに使用しているHAKKOの"T12-BC2Z"のコテ先ではそもそも温める事すら不可能でした。
先がある程度尖っていてパッドに当てることができるコテ先を選ぶのに時間がかかってしまいました。
色々試した所、手持ちで一番小さいHAKKOの"T12-BCF1Z"ではんだ付けに成功しました。
LEDのはんだ付けは基板のパッドにハンダを盛っておき、ハンダコテでパッドを温めてハンダが溶けた
タイミングでそっと上からLEDを乗せる事ではんだ付けに成功しました。
しかし、使い慣れていない先端の尖ったコテ先で他の部品をはんだ付けする際にレジストを剥がしてしまった箇所があり、尖ったコテ先の取り扱いは難しいなと思いました。
0603のLED以外は普段からはんだ付けしている大きさなのでそこまで苦労すること無くはんだ付けできました。
20分ぐらいで全ての部品のはんだ付けができました。そのうちの半分は0603のLEDと格闘していました。
実はC1をはんだ付けし忘れているのでそのうち載せておきます。
追記:載せておきました。2024/08/10
●基板の配布
せっかく作った基板なので色んな人にも挑戦してほしいなと思ったので、
Maker Faire Tokyo 2024
の自分のブースでキットとして販売します。
価格は1000円です。
20個程度は用意できると思います。
0603サイズのLEDと抵抗は予備が1個づつ入っています。
マイコンは書き込み済みにしておきます。
簡単なプログラムしか入っていないので、気に入らない場合は自分でなんとかしてください。
先端がよく尖ったピンセットと健康的な視力
たくさんの忍耐、粘り強さ、そして前向きな姿勢!
を準備してから組み立ててください。
そのうちBOOTHとかでも販売するかもしれません。
どうしてもキットが欲しい場合、DMやメールなどで連絡ください。
BOOTHで販売開始しています。
申し訳ありませんが不定期入荷なのでどうしても欲しい場合はTwitterなどで在庫を補充してと連絡ください。
チャレンジだからLEDが光らないところがあっても大丈夫!!自分を褒めよう!!!
完成したバッジとお米
バッジを手に持つとこんな大きさになっています。